「自分はネットリテラシーが高いので、悪徳歯医者なんかに騙されない」と思っている人は危険

探偵も同じですので気を付けて下さい。

 

ヤブ歯科医に騙されがちな人が見落とす盲点 逮捕続きの歯医者がなぜか「5つ星」の高評価

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東洋経済オンライン

トラブルばかり起こしてきた歯医者に、なぜ客が絶えなかったのか
 「自分はネットリテラシーが高いので、悪徳歯医者なんかに騙されない」
そう思っている人は少なくないだろう。だが、これまで100人を超す歯科関係者を取材した私の実感では、かえってそういう人ほど危ない。

ネットで悪徳歯医者を選んでしまった人は、相応に学歴も高く、ネット検索にも慣れている人が多かったからだ。

逮捕されても、なぜか客が絶えない歯医者A 今年1月、中国地方の歯医者A(50代)が、必要もなく患者の歯を勝手に削ったとして、傷害容疑で逮捕された。

この男性患者を診察した別の歯医者による通報で、事件は発覚した。2月には、別の患者に対する同様の容疑で、歯医者Aは二度、再逮捕されている。

5月から始まった公判では「正当な治療行為だった」として無罪を主張しているというが、この歯医者Aの過去をたどると、トラブルの多さは際立っている。

約20年前、この歯医者Aに前歯4本を切断された男性患者らが、説明を求めたところ、歯医者Aは「言いがかりで業務を妨害された」とする嘘の告訴を行い、逮捕されていた(虚偽告訴罪容疑)。

別の患者が、不必要な治療を受けたと訴えた時は、1億5000万円の損害賠償を患者に求める訴訟で対抗。裁判所は歯医者Aの請求を却下して、損害賠償の支払いを命じる判決を出している。

また、「二重請求」などの不正行為や、厚生局の「監査」を拒否したとして、この歯医者Aは保険医の登録を2回取り消され、逮捕当時は「完全自費診療」しかできなくなっていた。

トラブルばかり起こしてきた歯医者Aに、なぜたくさんの患者が集まっていたのか? この謎に答えてくれたのは、被害に遭った患者の一人だった。

「ネット予約ができる。土日も受診できる。そして家から近い。この条件に合ったのが、あの歯科医院でした。どのサイトを調べても、悪い口コミは見当たりませんでした」

つまり、トラブル続きだった歯医者Aは、奇妙なことにネット上では「評判のいい歯医者」になっていたのだ。

その患者は、常識では考えられない治療を受けていた。 「(歯医者Aは)優しそうなニコニコしたおじさんでしたが、自分のペースでどんどん勝手に治療を進めていきました。”歯茎が腫れている”と言って、強烈な力でブラッシングをして”ほら血が出ているでしょう。

もうちょっと遅かったら、取り返しがつかなかった”。そして、”噛み合わせにも問題がある”という理由で、7本の歯を削られたんです。

治療費は約8000円。明細が記されていない、手書きの領収書を渡されました。心配になって、別の歯医者に診てもらったら、歯を削る必要などなかったそうです。(治療された部分の)違和感は今も残っていますし、精神的なダメージもあります」

「口コミ」はおカネで買える

患者は歯科関連の「予約サイト」や「口コミサイト」を見たと証言している。

調べてみると、事件発覚後に各業者は、自社サイトから歯医者Aの情報を消去していた。

そこで、過去の掲載情報を追跡する方法を使ってみると、評価の大半が最高の「★★★★★=5つ星」で、ネガティブな投稿は、全く見当たらない。

実際に掲載されていた、口コミを並べてみよう。
「先生が明るい方なので、相談がしやすく助かっています」
「先生が優しかった」
「とても親しみやすく落ち着けて治療が早いのでとても助かります」
「早くて安い」
「親切丁寧で雰囲気のいい歯医者さんです」
歯医者Aが起こした過去のトラブルや、今回3度にわたって逮捕された状況とは、あまりにも乖離した内容だ。そして誰にでも思いつくような、凡庸で一般的な言葉で埋め尽くされている。

歯医者の口コミをわざわざ投稿する動機は、良くも悪くも患者としての強い印象や体験がモチベーションになる。「先生が明るい、優しい、親しみやすい、親切丁寧」など、無難な表現だけしか並んでいない口コミは「ニセモノ」の可能性を疑うべきだ。

ニセモノの口コミには、ほかにも「批判的な内容が一切ない」「投稿の日付が、一定の時期に集中している」といった特徴がある。この3つの要素が揃っていると、その歯医者についての口コミの信ぴょう性は非常に低いと考えたほうがいいだろう。

ある歯医者を取材中に、「予約サイト」の営業マンが訪問して、オプションサービスを紹介する場面に遭遇したこともあった。
「毎月の契約料の中には、口コミの分も入っていますので、集患効果はバッチリです」
営業マンが口コミを約束する意味は、あえて説明しなくてもおわかりだと思う。

また、私が口コミを疑うもう一つの理由は、アルバイトの存在だ。ネットの仕事紹介サイト(クラウドソーシングサイト)には、歯科医院の口コミから、歯医者のブログ等にネット上で治療の相談をするというサクラまで、さまざまな仕事の依頼が掲載されている。

一つの口コミ=200円前後の報酬が相場だ。調査の過程で、次のようなアルバイト募集を見つけた。

「歯医者へ行った体験談を募集します!口コミ募集の対象となっている医院は下記URLの予約受付が可能なクリニックに限ります」
このURLは、あの歯医者Aの歯科医院に「★★★★★=星5つ」の口コミが並んでいた、歯医者の予約サイトのものだった。

ネット上に「ネガティブ」な口コミが出ないのはなぜ?
ネット上の過去のネガティブ情報は、検索エンジンの特性を利用して、「都合の悪い情報の検索順位を下げる」方法で隠すことができる。

検索サイト大手・グーグルの場合、一つの表示画面につき、検索結果は10項目が基本設定(各自でカスタマイズ可能)。

大半の人は、検索結果の上位から数ページ程度しか閲覧しない。口コミやクリニックの紹介情報など、金で買えるポジティブな情報で検索上位を占めてしまえば、ネガティブな情報まで、簡単には行き着かないことになる。

残念なことに、ニセモノの口コミとセットになった歯医者の予約サイトや、紹介サイトと契約している歯科医院は、決して少なくない。患者を平気で欺く歯医者に、誠実な治療など期待できないだろう。

また、歯科治療に関する悩みについて、歯医者に無料で相談できるサイトがある。いわば、ネット上の公開セカンドオピニオンで、善意で運営されているように見える。

しかし、回答者(歯医者)の一部は、「治療相談」の内容を自院のホームページにそのまま転載していた。調べてみると、サイト運営会社と契約を結んだ歯医者にだけ可能な特典だった。巧みな広告の一種と言えるだろう。

これまで、医療機関のネット情報に関しては、規制対象外だったが、今年6月から改正医療法が施行されて、禁止事項が明示された。具体的には、「虚偽、誇大な表現」「患者の体験談」「術前・術後の症例画像(※例外規定あり)」などが、歯医者のホームページに掲載できない。

厚生労働省の官僚に話を聞くと、次のような答えが返ってきた。「法改正後も、違反している医療機関が多くて特に歯科はひどい。ネットの治療相談は、禁止事項の”患者の治療体験”ですので、それを歯科医師のホームページに掲載したら完全にアウトです」

ネット上には、ご紹介したケース以外にも、患者をおびき寄せるトラップが待ち受けている。こうした歯医者の禁じ手を見抜く目を持たないと、自分の歯を守れない時代であることを知ってほしい。